鴻池運輸の環境活動は「大阪・伝法」から始まった|ソリューション|鴻池運輸-和记娱乐网站
※所属・役職名等はインタビュー当時(2023年6月)のものです。
日本最大の湖、琵琶湖を源とする唯一の河川である淀川。滋賀県、京都府、大阪府を流れ、大阪湾に注ぐ全長75.1㎞の一級河川だ。その淀川の、目と鼻の先は大阪湾、という地点に大阪市此花区がある。そしてここは鴻池運輸の創業の地である。
少し歴史をひも解くと、1880(明治13)年、創業者・鴻池忠治郎が労務供給業と運輸業を開始したのが大阪の北伝法、現在の大阪市此花区伝法。ちなみに創業の地には、1910(明治43)年竣工の旧鴻池本店が残る。国登録有形文化財に登録された素晴らしい建物だ。
鴻池運輸と此花の地とは140年以上の付き合いということになる。そんななか創業130周年記念イベントの一環として、2012年11月17日に実施されたのが「淀川クリーンアップ活動」だ。そのコンセプトは「130年分の恩返し」である。
清掃場所は伝法大橋から伝法漁港までの約200m。
1回目は規模も小さく、天候にも恵まれず、参加したのは34人。しかしそれが春と秋の定期開催となり、グループ内で認知度が上がると参加人数も増えていった。
それから10年を経て、参加人数はどうなっているのだろうか。
環境部部長の髙澤圭一は「最近では社員の参加が100人から120人、社外の方も含めると200人くらいの規模になっています」と説明する。
同じく環境部の杉田茉優は「グループ会社によっては部署単位で参加を表明してくださるところや、日程のお問い合わせをいただくこともあって、認知度が上がっていると実感しま
す」と笑顔を見せる。
髙澤は「私は2017年に初めて参加しました。当時、研修センターに勤務していて、新入社員を連れての参加でしたが、彼らが楽しそうに活動しているだけでなく、環境への意識の高
さに驚かされました。学生から『この会社に入ったら、どんなサステナビリティ関連の活動ができますか』という質問を受けることもありますし、環境保全に対する意識の変化を強く
感じています」と、語った。
前述したとおり、淀川は3県を流れてくる長大な河川だ。しかも河口ということもあり、流れてくるゴミの量も種類も必然的に多くなる。過去の活動では仏壇や絵画、戸棚といった“大物”を拾ったこともあり、大いに驚いたと二人は口を揃える。また使用後のバーベキューセットがそのまま捨てられていたこともあり、モラルの低さに消沈することもあるという。
さらに近年は外来種、とくに昆虫の問題も発生。例えばアルゼンチンアリが河川敷で発見されたことから、これまでは集めたゴミ袋の口を縛るだけで良かったが、昨年からはひと手間増え、殺虫剤の噴霧が必須という指導が河川整備局から入ったという。
「コロナ禍で活動ができなかった2020〜2021年の間に、環境や生態系に変化があったことも驚きでした」(杉田)
ゴミは世の中の状況をダイレクトに伝えてくるもの。参加者はクリーンアップ活動を通して社会を知るきっかけにもなっているようだ。
活動の舞台となっている此花区は大阪市24区のひとつ。東西に長く、3方を淀川、安治川、大阪湾に囲まれている。
髙橋英樹区長は「南北は2㎞強、東西は夢洲(ゆめしま)の端までいくと10㎞くらいある 、細長い形をしています。いま夢洲の先に新しい島、まだ名前がついていないので新島 (しんとう)という言い方をしていますが、こちらの埋め立ても進むとさらに東西に延びていく予定です」と説明する。
そんな此花区が重視しているのはsdgs14(海の豊かさを守ろう)、つまり海の保全だ。
「2019年にg20大阪サミットが開催されました。そこで提案された『大阪ブルー・オーシャン・ビジョン』において、プラスチックゴミを廃絶しようという宣言がなされていて、 区役所では海の環境とプラスチックゴミは強く意識しているところです」
そして髙橋区長はkonoikeグループの「淀川クリーンアップ活動 」に対し、「素晴らしい」と賛辞を惜しまない。
「年2回、あれだけの人数でやってくださるのは本当にありがたい。雨が降って増水すれば、河川敷のゴミはすべて海に流れて出てしまう。それを未然に防いでくれるわけですから、美観の点でもsdgs14の観点でも、大変有益な活動だと感じています」
2022年秋の活動では200mの範囲を清掃し、45リットルのゴミ袋149袋分のゴミが回収されたという。 確かにそれだけのゴミが海へと流れ込んでしまえば、大海原へと運ばれ、いずれは海底へと沈み、回収不可能になってしまったはずだ。
「私は 2020年に此花区長に就任しました。コロナ禍もあり、ようやく、そして初めて参加させていただいたのが2022年秋の活動でした。 活気あふれる良いイベントでした。なにしろ景品としていただけるのがなんとカツサンド。野菜のサンドイッチじゃなくてカツサンド(笑)区民の方はそれも楽しみにしていましたね。それは冗談としても、参加者がゴミ拾いを楽しんでいるなと実感しました。『ゴミ拾いは辛いけど、区民のため環境のためにやっているんですよ』なんてネガティブな雰囲気は一切なく、変わったゴミを拾えば『区長、見て!』、『一緒に写真撮って!』。この楽しさこそが長続きの秘訣です。行政側からすると、ついつい大所高所から見てしまいがちですが、シンプルに『ゴミを拾った、きれいになった、楽しかった、なんとなく気持ちもクリーンになった』ということでいいのだと納得しました」
そして髙橋区長から活動を淀川沿いから此花区内へと広げてほしいという要望が出された。それが正蓮寺川公園の清掃である。
正蓮寺川公園とは、 区内を流れていた正蓮寺川の埋め立て跡地に整備が進められている公園のことで、 完成すれば幅80〜100m、全長約2.5㎞、面積甲子園5.5個分というサイズを誇る、此花区を縦断するグリーンベルトになる。いま2.5㎞のうち1㎞分、森巣橋までが完成しており、すでに地域の人々が集う場所になっていた。
水質汚濁と悪臭の川を再生してできた美しい正蓮寺川公園は区民運動の成果で、公害に「いのちの輝き」が勝利した歴史の象徴であり、此花区で開催される万博のテーマにも通じる公園だと髙橋区長。そんな公園に、それ自体「いのちの輝き」であるアートを20年以上かけて100以上置き、人々に「いのちの輝き」を発信、楽しんでもらえる場所にする事業を、区役所は今年度スタートさせた。
「公園の完成は早くて10年後、アート事業の完成は早くて20年後です。今後は雑草も生えるでしょうし、ゴミの心配もあります。ですから、年2回の活動のうち1回、また3回のうち1回でもいいので、正蓮寺川公園で、ともにクリーンアップ活動をしていただけないかと思っているんです」
清掃範囲は10倍以上。となればkonoikeグループ、此花区を挙げての一大イベントになるはずだ。ちなみに10年後は、 鴻池運輸創業150年と近しいタイミング。もしかすると「150年分の恩返し」として、「正蓮寺川公園クリーンアップ活動」が実施されるかもしれない。
konoikeグループは、関東進出の足掛かりとなった東京都江戸川区でも環境活動を行っている。その一つが2018年4月から実施している、大島小松川公園で開催される「小松川千本桜まつり」での清掃ボランティアだ。同年12月からは同公園で開催される「育樹大会」にも参加しており、桜の樹への施肥と公園内の清掃を行っている。
2つのボランティア活動を合わせて、これまでkonoikeグループから延べ130人の従業員が参加している。
これらの活動に対して、2023年6月4日、江戸川区の「環境をよくする運動」に貢献したとして同区区長より表彰状を授与された。
江戸川区は鴻池運輸が東京で初めての営業所を開設した場所。此花区と同様、最初の縁を大切にしているのだ。
少しずつ広がりを見せている活動内容だが、次なる取り組みとして昨年始めたのが「フードドライブ」だ。これは各家庭で余った食品を集め、食材を子ども食堂などへ寄付するというもので、此花区役所とタッグを組んで実施しているという。
此花区と江戸川区のクリーンアップ活動を軸に、大阪・東京で社会貢献活動が活発になってきつつあるが、これら活動を通して社員にどういう想いをつなげていきたいのだろうか。
髙澤は「環境保全活動への入り口がkonoikeグループの社員という立場だったとしても、その意識を自分のものにしてほしい」と言う。そのために 環境部は社員に対してさまざまな機会を提供するし、そのノウハウを自分たちの職場に持ち帰り、地域や暮らしに合わせた環境保全活動をつくりあげ、いずれは自立自走してもらいたいとも考えている。
「環境問題は人間としてこれから向き合うべき、避けては通れない課題です。となれば、『行かなあかんのか』というネガティブな行動ではなく、生活の一部として受け止めてほしい。人の一生は長いものです。いま社員でも、いずれはそうでなくなる日がきます。 たとえそうなっても続ける意識が持てる活動を提案していきたいと思っています」
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